>_tech-draft
Vercelのアイコン
Vercel
動画公開日
タイトル

Ship 26 NYC - Claude Managed Agents on Vercel's Agentic Infrastructure

再生時間

16分 27秒

Anthropic Claude Managed AgentsとVercel Sandboxesで実現するセキュアなAIエージェント実行環境

ポイント

  • 外部連携を伴うAIエージェントのセキュアな実行環境構築に悩む開発者へ、その課題解決策を提示します。
  • Anthropic Claude Managed AgentsとVercel Sandboxesの連携により、エージェントの「脳」(制御)と「手」(実行)を分離する新しいアーキテクチャを解説します。
  • これにより、高度なセキュリティ要件を満たしつつ、エージェントの実行環境を完全に制御できる実践的な知見が得られます。

Anthropic Claude Managed AgentsとVercel Sandboxesで実現するセキュアなAIエージェント実行環境

AIエージェントは、単に情報を提供するだけでなく、実際に「行動する」ことでその真価を発揮します。ファイル読み書き、API呼び出しなど、外部世界とのインタラクションが可能なエージェントは、日々の業務に革新をもたらす可能性を秘めています。しかし、エージェントを安全かつ効率的に実行するための環境構築には、多くの課題が伴います。

Anthropicは、これらの課題を解決するために「Claude Managed Agents」という新しいAPIスイートを発表しました。本記事では、AnthropicのテクニカルスタッフであるHarrison氏の解説に基づき、この新しい技術とVercel Sandboxesとの連携が、いかに安全で柔軟なAIエージェントの実行環境を実現するのかを深掘りしていきます。

Claude Managed Agentsとは

Claude Managed Agentsは、Anthropicが提供するAPIスイートであり、エージェントを迅速かつ容易に立ち上げ、実行できるように設計されています。その主な構成要素は以下の通りです。

  • エージェントの作成: まず、エージェント自体を定義します。これには、エージェントが利用できる「ツール(機能)」や「スキル」、その振る舞いを決定する「システムプロンプト」、そして「権限」のリストが含まれます。これは、多くの方がこれまでに耳にしたエージェントに関する議論と共通するパターンです。
  • 実行環境の定義: 次に、エージェントが動作するための環境を準備します。この環境には、ネットワークの許可リスト、Claudeが動作するコンテナにインストールされるパッケージなどが含まれ、エージェントが外部世界とどのようにインタラクションするかを規定します。Claudeは、適切な計算リソースが与えられた場合に、非常に効率的にタスクを遂行します。
  • セッションの開始: エージェントと環境が整ったら、セッションを開始します。これにより、エージェントは実世界に出て行き、実際に有用な作業を実行します。
  • リアルタイムストリーミングと制御: エージェントが作業を行っている間、その動作をリアルタイムでストリーミングし、監視することが重要です。もしエージェントが望ましくない方向に進んだ場合、リアルタイムで介入し、修正する機能も必要となります。

AIエージェント開発における課題:自前構築 vs. マネージドサービス

多くのユーザーは、エージェントをどこで実行し、その実行基盤(エージェントハーネス)をどのように構築するかという難しい決断に直面しています。選択肢は大きく2つに分かれます。

オプション1:Anthropicによるフルマネージド(Claude Managed Agents)

このオプションでは、エージェントループの実行から、エージェントが動作するコンテナの運用まで、すべてをAnthropicに任せます。迅速な導入が可能で、運用負担が少ない点がメリットです。

しかし、すべてのユースケースに適合するわけではありません。特に、独自のセキュリティ要件や、実行環境に対するより深い制御が必要な場合には、このアプローチでは不十分となることがあります。

オプション2:自前でエージェントハーネスを構築し、推論プロバイダー(例: Anthropic v1 Messages)と連携

このオプションでは、ユーザー自身がエージェントの実行基盤全体を構築・運用し、Claudeのような推論プロバイダーのAPIと連携します。これにより高い柔軟性と制御が可能になりますが、以下のような深刻な課題も存在します。

  • 莫大な開発コストと時間: ゼロから構築する場合、本番環境に投入するまでに6〜8週間を要することもあります。ツールディスパッチ、エラー発生時のリトライ処理、エージェントコンテキストの適切な管理、リアルタイムストリーミングインフラの構築など、多岐にわたる要素を自力で実装する必要があります。
  • 未差別化領域への投資: これらのインフラ構築は、製品の差別化に直接貢献しない部分に多くの時間とリソースを費やすことになります。
  • 継続的な運用・保守の負担: モデルのアップグレード、新しいツールの導入、エージェントの最新状態維持など、一度構築した後も継続的なメンテナンスが必要です。ユーザーの声によると、これだけでエンジニアの20%以上の工数がかかる場合もあるといいます。

Anthropicの洞察:「エージェントの脳」と「エージェントの手」の分離

AnthropicがClaude Managed Agentsを構築する過程で得た重要な洞察は、エージェントインフラ全体を2つのまったく異なるコンポーネントとして考えるべきだという点です。

「脳」(The Brains):推論プロバイダー

これは、エージェントハーネス(実行基盤)であり、エージェントが思考し、決定を下す部分、つまり「脳」に相当します。モデルとの統合や、最新のエージェントロジックへの追随が含まれます。

「手」(The Hands):エージェントの行動

これに対し、「手」は、エージェントが実世界で具体的な行動を起こす部分です。ツールを実行したり、ネットワークを通じて外部にアクセスしたり、APIを呼び出したり、ファイルを読み書きしたりする一連の動作を指します。

この「脳」と「手」の明確な分離という洞察は、Anthropicが自社のエージェントインフラを構築する方法を根本的に変え、コンポーネント化をより容易にしました。

Vercel Sandboxesと連携する自己ホスト型サンドボックス

この「脳と手」の分離を実現するため、AnthropicはVercel Sandboxesとのパートナーシップにより「自己ホスト型サンドボックス」という新機能をリリースしました。これにより、Anthropicとユーザーは、それぞれの得意分野に集中できるようになります。

Anthropicが担当する「脳」(制御プレーン)

Anthropicは、引き続きv1 Messagesとの統合や、最新のエージェントハーネス開発への追随といった「制御プレーン」を担当します。これにより、以下のメリットが提供されます。

  • セッション抽象化: エージェントが実行したアクションやその履歴、ツール呼び出し、推論の入出力などを一貫して管理する抽象化を提供します。これにより、エージェントの動作を把握し、デバッグが容易になります。
  • 迅速なモデルアップグレード: 新しいモデルがリリースされた際に、Anthropic側でハーネスを評価し、迅速に統合するため、ユーザーは常に最新かつ最適化されたエージェントを利用できます。
  • モニタリングとWebhook: エージェントの状況をリアルタイムで把握できるモニタリング機能や、特定のイベント発生時に通知を受け取れるWebhook機能が提供されます。

ユーザーが制御する「手」(実行環境)

一方、ユーザーはVercel Sandboxesを利用することで、エージェントの実行環境を全面的に制御できます。これにより、ユーザーは自身のコンテナ、ファイルシステム、そしてClaudeがサンドボックス内で実行できるすべてのツールを持ち込むことができます。

  • 完全な制御: すべてのシェルコマンドやファイル操作は、ユーザーが完全に制御するサンドボックス内で実行されます。
  • 柔軟なネットワークポリシー: 独自のネットワークポリシーを適用したり、社内サービスをサンドボックスに公開したりするなど、サンドボックスがアクセスできる範囲を厳密に管理できます。
  • セキュリティの強化: これにより、Claudeには、ユーザーが設定したセキュリティ要件の下で、必要な情報のみをアクセスさせることが可能になります。

具体例:医療機関での利用ケース

このアプローチの強力なメリットを理解するために、仮に病院での利用ケースを考えてみましょう。病院のような環境では、機密性の高い患者情報がインフラストラクチャ内に存在するため、Anthropicに全ての情報へのアクセスを許可することは、セキュリティ上、非常に困難です。

自己ホスト型サンドボックスの構成では、Anthropicが上層でエージェントハーネス(脳)を実行しますが、エージェントの具体的なツール呼び出しやアクションは、病院のネットワーク環境内のサンドボックスで実行されます。これにより、Claudeはファイル読み書きなどのアクションを、病院が定める厳格なセキュリティ管理下で実行でき、Claudeには必要な情報のみを、ユーザーが快適に感じる形で提供できるのです。この機能は、セキュリティとプライバシーが最優先される業界にとって、非常に大きな意味を持ちます。

まとめ

Claude Managed AgentsとVercel Sandboxesの連携は、AIエージェントの導入と運用における既存の課題を解決する強力なソリューションを提供します。Anthropicはエージェントの「思考」と「継続的な最適化」を担い、ユーザーはVercel Sandboxesを通じてエージェントの「行動」を、自社のセキュリティポリシーと要件に沿って安全に制御できます。

これにより、ユーザーはエージェントの活用により差別化を図るコアビジネスロジックに集中し、インフラ構築と保守の負担から解放されるとともに、高度なセキュリティ要件を満たしながらAIエージェントのポテンシャルを最大限に引き出すことが可能になります。

参考動画