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Builders Unscripted: Ep. 2 - Ashe Magalhaes, Founder of Hearth AI

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33分 39秒

Hearth AI開発秘話:AIエージェントCRM創業者が見たフロンティアテックの挑戦

ポイント

  • Hearth AI創業者Ash氏が、GPT-3.5が主流だった黎明期におけるAIエージェントCRM開発の技術的課題と、当時の基盤システムの不安定さに直面した経験を解説します。
  • NASAでの衛星開発や太陽光カーレーサーとしての挑戦を通じて培われた、フロンティアテックへの飽くなき探求心と実践的な開発姿勢について深く掘り下げます。
  • 最終的に、彼の多様なキャリアが、AIを単なるタスク自動化ではなく「人間的な繋がり」や「リレーショナルインテリジェンス」を促進するツールとして捉える哲学へ至った経緯を提示します。

Hearth AIの創業者であるAsh氏を迎え、初期のAI製品開発における挑戦、多様なキャリアパス、そしてテクノロジーが人間にもたらす真の価値について深く掘り下げた対談の内容をご紹介します。MLエンジニアとしての背景から、NASAでの衛星開発、さらにはスタンフォードで太陽光発電レーシングカーを開発し、自らドライバーとして世界大会に出場した経験まで、Ash氏のフロンティアテックへの飽くなき探求心と、その中で培われた洞察は、今日のAI開発者にとって多くの示唆を与えてくれるでしょう。本記事では、彼がどのようにしてAIエージェントの可能性を追求し、人間的な繋がりを重視するHearth AIのビジョンへと至ったのかを詳しく解説していきます。

Hearth AIの挑戦:初のAIエージェントCRM開発

2022年にHearth AIを創業したAsh氏は、「初のエージェントCRM」という画期的なコンセプトに挑戦しました。当時、まだGPT-3.5が主流だった2023年頃、彼らはエージェントワークフローを構築しようと試みていました。しかし、当時の基盤システムは非常に脆弱であり、非決定的な性質を持つLLM(大規模言語モデル)をプロダクトに安定して組み込むことは大きな課題だったと言います。

Ash氏は、構造化された出力を得ることや、JSONスキーマを用いた情報検索など、当時まだ整備されていなかった機能をAPIで実現しようと模索していました。ユーザーはLLMが新しい技術であることには関心がなく、ただその柔軟性をプロダクト体験として享受したいと考えていたため、開発側は常に新しい技術の限界を押し広げる必要がありました。

フロンティアテックへの情熱:NASAから太陽光カーレースまで

Ash氏のキャリアは、その多様性とフロンティアテックへの深い関心に特徴づけられます。ML(機械学習)エンジニアとしてのバックグラウンドを持つ彼は、深層学習の波に乗り、その商用化を牽引してきました。

さらに、彼の経験はMLに留まりません。AirbnbでMLエンジニアとして働いた後、NASAでは衛星開発にも携わりました。そして、その原点とも言えるのが、スタンフォード大学での太陽光発電レーシングカー開発です。彼は2年間、チームと共に太陽光カーの製造に没頭し、テレメトリー、CADモデリング、メッシングといった技術分野を担当しました。驚くべきことに、彼は自らドライバーとしてもトレーニングを積み、カリフォルニア各地のオートクロスイベントに参加しました。

このカーレースの経験は、単なる技術開発を超えたものでした。彼らは自ら構築した車をオーストラリアに輸送し、2年に一度開催される国際太陽光カーレース「ブリヂストン・ワールドソーラー・チャレンジ」に挑みました。オーストラリアの奥地で3ヶ月間準備を重ね、ダーウィンからアデレードまでの5日間、90km/h(約60マイル/時)で走行するレースに、Ash氏は6時間交代でドライバーとして参加しました。ケンブリッジ大学のチームがクラッシュするなど、大きなリスクが伴う中、2年間かけてチームで作り上げた車に自分の体を預けるという経験は、彼のその後の開発者としての厳格な姿勢とリスク管理能力に大きな影響を与えたと語っています。これは、まさに「フロンティアテック」の最前線で、技術的な限界を押し広げると同時に、安全な意思決定を行う重要性を肌で感じた経験だったと言えるでしょう。

Ash氏は、こうした「物事を現実にする」という強い好奇心が、常に彼を突き動かしてきたと述べます。エンジニアリングは彼にとって、衛星、車、コード、そして詩や動画といった多様な媒体を通じて創造性を具現化するための「ツール」であり、この創造的なプロセスこそが日々のエネルギー源になっていると語っています。

初期AI製品開発の困難と学び

初期のAI製品開発、特に約3年前にエージェント製品を構築していた頃を振り返ると、Ash氏は多くの規範が破壊されていたと述べます。彼のチームが数週間ごとにエージェントスタックを再構築していたことは、周囲の理解を得るのが難しかったと言います。従来のテック業界では、ML製品を開発する際、まずデータパイプラインの構築に1年ほどかけ、それから予測や興味深いML製品の開発に進むのが一般的でした。しかし、AIエージェント開発においては、「ユーザーに柔軟な体験を提供したい」という思いから、非常にオープンな世界でアプローチせざるを得ませんでした。

当時のユーザーは、エージェントへの問い合わせ行動がまだ確立されていませんでした。例えば、2023年の時点でSlackボットが応答することを知らないユーザーが多く、「単なる通知だ」と捉えられることもあったため、開発側だけでなく、ユーザー側にも新しい行動を教育する必要がありました。

Ash氏は、この時期において、他の開発者との関係性が非常に重要だったと強調します。誰もが手探りで学習している状況において、オープンかつ透明に情報やノウハウを共有し合える友人たちの存在、そしてAIラボ内の友人との関係が、実際に機能する製品を作り上げる上で決定的な違いを生んだと語っています。

テクノロジーのその先へ:人間関係と繋がりの探求

Ash氏がHearth AIの核心として「人間関係」や「人間的な繋がり」を重視するようになった背景には、深い思考があります。彼は、ポール・カラニティの著書『When Breath Becomes Air』(『「死」は存在しない』)に触発されたと語ります。この本は、神経科学の授業で会ったことがある人物が末期の病に直面した状況を描いており、その中で彼は、人生の頂点に到達し、多くの功績を上げた後に「そして、これからどうするのか?」と問いかける場面に感銘を受けました。

Ash氏自身も若い頃からフロンティアテックに触れる機会が多くありましたが、やがて「精神的な足場」が欠けていることに気づいたと言います。自己探求の結果、「死の床で何を大切に思うか」という問いに行き着きました。衛星も、太陽光カーも、MLの技術も素晴らしいが、最終的に本当に大切にするのは、自分自身や他の人々といかに深く繋がっていたか、どれほどの存在感と愛を交換できたかだと考えたのです。

この気づきから、Ash氏は「繋がり」を推進したいと強く思うようになりました。彼は、「人類の進歩の弧は、愛と繋がり、そしてイノベーションへと向かう」と信じており、AIもまた、この「繋がり」をさらに推し進めるべきだと考えています。

Hearth AIがエージェントCRMという形で追求したことは、まさにこの「繋がり」の初期の具現化でした。現代社会において、私たちはかつてないほど多くの人々と繋がっているにもかかわらず、孤独を感じたり、その繋がりを個人的にもチームとしても十分に活かせずにいるという長年の課題に、彼は着目し続けています。Hearth AIのエージェントCRMは、この関係性(リレーショナルインテリジェンス)をAIが拡張し、人間体験を豊かにするという彼の信念に基づいています。

まとめ

Hearth AIの創業者であるAsh氏のキャリアパスは、フロンティアテックの最前線で技術的な挑戦を重ねてきた一方で、その究極の目的として人間的な繋がりと愛を追求する、深遠な哲学に貫かれていることが明らかになりました。初期のAIエージェントCRM開発における困難を乗り越え、太陽光カーレースでの命がけの経験を通じて得た洞察は、技術が単なるツールに留まらず、私たちの人生、ひいては人類の進歩の方向性を形作る可能性を秘めていることを示唆しています。

彼の語る「リレーショナルインテリジェンス」という概念は、AIが単にタスクを自動化するだけでなく、人々がより深く繋がり、共感し合う社会を築くための強力な触媒となる可能性を示しています。Ash氏の物語は、技術者としての探求心と、人間としての深い洞察が融合した、稀有なキャリアパスの模範と言えるでしょう。

参考動画

https://www.youtube.com/watch?v=flweA_I-VKE