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Vercel Skills Night NYC 2.26.26

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52分 29秒

Vercelが発表するAgent CloudとAI開発を革新する新SDK、Gateway、Compute

ポイント

  • Vercelは「Frontend Cloud」から「Agent Cloud」へと進化し、AI駆動型エージェントの開発を革新する新ツール群を発表しました。
  • AI SDK、AI Gateway、Fluid Computeなどが、日々進化するAIモデルの利用やインフラ管理の複雑さを解消します。
  • 開発者は、これらのツールにより最新のAI技術を活用し、安全かつ効率的に次世代のAIエージェントを構築できるようになります。

Vercelは、開発者がインフラの管理に煩わされることなく、独自の製品開発に集中できる環境を提供することで、Web開発の未来を築いてきました。しかし、現代のソフトウェア開発は急速な変化を遂げており、単なるWebページやWebアプリケーションの構築に留まらない新たなニーズが生まれています。本記事では、Vercelがどのようにこの変化に対応し、「Frontend Cloud」から「Agent Cloud」へと進化を遂げようとしているのか、そしてその中心となる画期的なAI開発ツール群について詳しく解説します。

Vercelのビジョン:インフラストラクチャからの解放

Vercelは、開発者がプロダクトとユーザー体験に集中できるよう、インフラストラクチャの設定やDevOpsの課題から解放することを目指しています。Next.jsをはじめとするフレームワークは、Vercelが提唱する「フレームワーク定義型インフラストラクチャ(Framework Defined Infrastructure)」という概念を具現化し、git pushするだけでVercelが残りのすべてを自動で処理します。これにより、開発者はインフラとの格闘ではなく、イノベーションに時間を使えるようになりました。

「ページからエージェントへ」のパラダイムシフト

近年、ソフトウェア開発のトレンドは大きく変化しています。Vercelでは、この変化を「ページからエージェントへ(shift from pages to agents)」と呼んでいます。エージェントとは、どこからでも呼び出し可能で、設定されたルール、目標、トリガーに基づいて自律的に動作するソフトウェアのことです。多くの場合、エージェントにはユーザーインターフェースが付属しておらず、Vercel自身も社内で業務効率化や高品質な体験構築のために数百ものエージェントを構築・活用しています。

このような次世代のソフトウェア、すなわちエージェントを支えるには、従来のフロントエンドクラウドが提供する以上の新しいツールが必要でした。Vercelは、このニーズに応えるため、社内で構築し成功を収めたツール群を、今度は外部の開発者にも提供することを決定しました。

エージェント駆動型ソフトウェアを支えるVercelの新たなツール群

Vercelは、エージェント駆動型ソフトウェアの開発を加速するために、以下の主要なツール群をリリースしました。

AI SDK:モデル選択の柔軟性を最大化

VercelがAI開発を始めた初期に直面した大きな課題の一つは、日々リリースされる新しいAIモデルへの対応でした。毎週のように異なるラボから新しいモデル(例: GPTの更新、Anthropic Sonnetなど)が登場するため、そのたびにアプリケーションのコードを変更して最新モデルをテストし、活用するのは非常に非効率でした。

AI SDKは、この課題を解決するために開発されました。AI SDKを使用することで、プロダクトコードに大きな変更を加えることなく、新しいAIモデルを試したり、アプリケーションの異なる部分で最適なモデルを使い分けたりすることが可能になります。現在では、数百ものモデルに対応し、様々なフレームワークとシームレスに連携する独自のフレームワークのような存在となっています。

AI Gateway:APIキー管理と信頼性の課題を解決

Vercel社内でAIを利用するチームが増えるにつれて、各チームがそれぞれ基盤となるモデルラボのAPIキーやアカウントを管理するという問題が浮上しました。これは、管理の複雑化とセキュリティリスク増大を招きます。

そこで開発されたのがAI Gatewayです。AI Gatewayは、数百ものAIモデルへのアクセスを一元化し、APIキーの管理を不要にします。新しいモデルがリリースされれば、即座にGatewayを通じて利用可能となり、開発者はAPIキーの心配なくアプリケーションに組み込むことができます。また、企業が特定のモデルラボと契約している場合は、独自のキーを持ち込むことも可能です。

AI Gatewayの最大のメリットは、その信頼性とパフォーマンスにあります。例えば、特定のモデルプロバイダーで信頼性、パフォーマンス、可用性の問題が発生した場合でも、AI Gatewayはシームレスに別のプロバイダーにフェイルオーバー(切り替え)することができます。これにより、基盤となるモデルを直接利用するよりも、高い安定性を確保できるようになります。

Fluid ComputeとVercel Sandbox:I/Oバウンドなワークロードと安全なコード実行

Vercelは、サーバーレスコンピューティングを普及させる上で大きな役割を果たしましたが、AIアプリケーションには特有のコンピューティングニーズがあることを認識しました。AIアプリケーションは、モデルからのレスポンスを待つ時間が多く、「I/Oバウンド」な特性を持っています。

このI/Oバウンドなワークロードに大規模にスケールするコンピューティングモデルとして開発されたのがFluid Computeです。

さらに、AIモデルがコードを生成するケースが増える中で、そのコードを安全に実行できる環境が必要となりました。プロダクション環境のシークレットにアクセスすることなく、生成されたコードを安全なサンドボックス環境で実行するために構築されたのがVercel Sandboxです。これにより、開発者はAIが生成したコードを安心して検証・実行できます。

Vercel Workflow:複雑なエージェントの処理を効率化

バックエンドにおけるソフトウェアの形態も変化しています。従来のマイクロサービスを手動で管理するアーキテクチャではなく、エージェントは、より複雑で長時間実行されるタスクに対して、命令的な(imperative)ワークフローを構築することを求めます。

このニーズに応えるために開発されたのがVercel Workflowです。Vercel Workflowは、複雑なエージェントのロジックや、複数のステップにわたるタスクの実行を効率的に管理するためのツールです。

Chat SDK:多様なインターフェースに対応

ユーザーがソフトウェアにアクセスする方法も多様化しています。これまではWebページを訪れて操作するのが一般的でしたが、現在ではSlack、Microsoft Teams、GitHubなど、様々なチャットインターフェースからエージェントを呼び出すケースが増えています。

Chat SDKは、この多様なチャットインターフェースを抽象化する役割を担います。AI SDKが基盤となるAIモデルを抽象化するのと同様に、Chat SDKは様々なチャットプラットフォームの背後にある複雑さを隠蔽し、開発者が一度コードを書けば、あらゆるチャットインターフェースでエージェントを利用できるようにします。

Vercel Agent Platform / Agent Cloudの展望

これら一連のツール群は、従来の「Frontend Cloud」の提供範囲をはるかに超えるものです。Vercelは、これらの新しい機能を総称して、「Vercel Agent Platform」または「Agent Cloud」と呼ぶことを検討しており、次世代のソフトウェア開発をリードしていく強い意向を示しています。

まとめ

Vercelは、Web開発におけるインフラ管理の課題を解決し、開発者が本質的な価値創造に集中できる環境を提供してきました。そして今、AI駆動型のエージェントソフトウェアという新たなパラダイムシフトに対応するため、AI SDK、AI Gateway、Fluid Compute、Vercel Sandbox、Vercel Workflow、Chat SDKといった革新的なツール群をリリースしました。これらのツールは、開発者が「Agent Cloud」の時代において、より迅速に、より安全に、そしてより効果的にAIエージェントを構築できるよう強力にサポートします。Vercelのこの進化は、次世代のソフトウェア開発を大きく加速させることでしょう。

参考動画 https://www.youtube.com/watch?v=0oIPCHj2qo4