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Vercel Ship AI 25: Opening Keynote

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50分 20秒

Vercel AI CloudとAI SDKで加速するAIエージェント開発の最前線

ポイント

  • AIエージェント開発者が直面する複雑なAPI統合やインフラ管理の課題に焦点を当てます
  • Vercel AI CloudとAI SDKは、それらを統合し高速な開発を支援するプラットフォームを提供します
  • 開発者はインフラに悩むことなく、インテリジェントなアプリケーション構築に集中し、ビジネス価値を最大化できます

Vercel AI CloudとAI SDKで加速するAIエージェント開発の最前線2025年、私たちはウェブの「ページ」から「エージェント」へと移行する、新たな技術変革の時代を迎えています。かつてReactとNext.jsのエコシステムが登場し、ウェブ開発が劇的に加速したように、現在、AIがアプリケーション開発を次のレベルへと押し上げています。しかし、その過程には新たな課題が山積しています。

本記事では、Vercelが提唱するAI時代の開発プラットフォーム「Vercel AI Cloud」と、その中核をなす「AI SDK」に焦点を当て、AIエージェント開発の複雑さをどのように解決し、開発者が真に価値のある部分に集中できる環境を提供しているかを探ります。

AIアプリケーション開発が直面する課題

AIアプリケーションの開発は、当初は特定のモデルAPIを呼び出し、プロンプトを与えて応答を得るシンプルなものに感じられました。しかし、複数のモデルを切り替えたり、プロバイダーごとのユニークなSDKを管理したり、レートリミットに対応したり、さらには複数の課金システムを調整したりと、その複雑さは増す一方です。

Vercel自身も「Vzero」というAIエージェントを構築する中で、これらの課題に直面しました。AIエージェントの構築は、あるべき姿よりもはるかに困難だったのです。

Vercelが提供する解決策:AI SDKとVercel AI Cloud

AI SDK:AI開発の標準ツール

Vercelがこの課題を解決するために生み出したのが「AI SDK」です。AI SDKは、異なるプロバイダーのAPIを非損失的な方法で統合します。これにより、開発者は基盤となるモデルの全機能を活用しながら、最新技術を用いたエージェントを構築できます。

オープンソースとして提供されているAI SDKは、現在では週に約400万ダウンロードを記録し、AI開発の新たな標準となりつつあります。このSDKは、AI技術の進化の速度を物語っています。

Vercel AI Cloud:AIファーストな統合プラットフォーム

AI SDKは、Vercelが描くより大きなパズルの一片に過ぎません。企業が構築したものを本番環境で大規模に、エンタープライズレベルの信頼性とセキュリティで迅速に実行するには、包括的なプラットフォームが必要です。

Vercel AI Cloudは、AIファーストなツール、セキュリティ、オブザーバビリティ(可観測性)、コンピュートなどを統合したプラットフォームです。これにより、チームはインフラとの格闘に時間を費やすことなく、インテリジェントなアプリケーションやエージェントを迅速に開発・デプロイできます。

TypeScriptやPythonといった主要な言語に対応しており、既存のスキルセットでAIアプリケーション開発をすぐに開始できます。

高速なイテレーションと品質を両立

Vercelはこれまで、年間数十億のデプロイをサポートし、兆単位のリクエストを処理してきました。AIの台頭と共に、現在では毎月1,000億以上のAIコールを処理し、2兆以上のトークンを処理しています。これは、VercelがAIに関する深い知見と実績を持っていることを示しています。

Vercelの目標は、AIを活用して、チーム、製品、そして顧客のために、可能な限り最速のイテレーション速度と最高の品質を達成することです。

「何を」AIで構築すべきか?Vercelの内部エージェント事例

Vercelは、社内でもAIエージェントを活用し、その効果を実感しています。具体的な事例をいくつかご紹介します。

1. サポートエージェント

カスタマーエクスペリエンスチームが構築したサポートエージェントは、サポートチケットの量を劇的に削減しました。これにより、チームは真に人間の専門知識を必要とするチケットに集中できるようになりました。

2. 取引レビューエージェント

Go-to-Marketチームが開発したこのエージェントは、Salesforceのデータ、Slackの会話、営業通話の記録など、複数のデータソースをレビューします。そして、それらのデータに社内の知識を組み合わせることで、過去の取引の勝敗に関する貴重な洞察を自動で提供できるようになりました。これにより、手作業で行っていたプロセスが効率化されています。

3. クリエイティブコーディングエージェント

Vercelが新しいJavaScriptランタイム「Bun」のサポートを発表する際、その発表ブログ記事や変更ログの初稿作成に時間を要していました。そこで、このエージェントが、社内Slackでの会話の文脈から最初のドラフトを作成するのを支援しました。これにより、情報発信の速度が向上しています。

「どのように」AIを構築すべきか?エージェントの定義とライフサイクル

AIエージェントの構築には様々なアプローチがあります。

Agent as a Serviceという選択肢

ChatGPT Enterprise、Claude Enterprise、Vercelのコードレビューエージェント(Vzero)のように、すぐに利用できる「Agent as a Service」も存在します。これらは導入が容易で、多くの企業で成功を収めています。

しかし、既製のサービスだけでは、組織固有の製品、データ、顧客に関するあらゆる課題や機会に対応できるわけではありません。そのため、多くの場合、企業独自のカスタムエージェントを構築する必要があります。

エージェントの定義

Vercelの創設者兼CEOであるGuillermo Rauchは、エージェントを「特定の成果を追求するために、ツールをループで呼び出すAIモデル」と定義しています。例えば、Google AI Overviewは、ユーザーの代わりにウェブを検索し、複数のタブを開いて情報を読み込み、要約し、概念を抽出するといったツール呼び出しを自動で行い、最終的な成果を提供します。

エージェントのライフサイクル

エージェントは、その動作において特定のライフサイクルをたどります。一般的に、以下のステップを繰り返します。

  1. プロンプトの受け入れ: ユーザーからの指示や質問を受け取ります。
  2. 推論と計画: コンテキストを理解し、次の行動をインテリジェントに計画します。
  3. ツールの実行: 計画に基づき、外部ツールを呼び出してアクションを実行します。必要に応じてこのステップを繰り返します。

このワークフローは、ノードが接続されたビジュアルなデザインのように見えます。ローコードやノーコードツールでも同様のものをプロトタイピングできますが、CI/CD、デプロイプレビュー、スケーラビリティ、オブザーバビリティ、バージョン管理といった、本番環境で求められる堅牢な機能が不足している場合が多いのが現状です。

エージェントはビジネスの次世代ソフトウェアの基盤となるため、これらの課題を解決できるような、信頼性と拡張性の高い開発環境が不可欠なのです。

まとめ

AIエージェントは、私たちのアプリケーションとビジネスのあり方を根本から変えようとしています。Vercel AI CloudとAI SDKは、この複雑な変革期において、開発者がインフラの課題に煩わされることなく、AIの可能性を最大限に引き出すための強力なツールを提供します。

AIの力を活用し、より高速で高品質なアプリケーションを構築することで、私たちは顧客に新たな価値を届け、ビジネスを次のレベルへと進化させることができるでしょう。


参考動画